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【生き残る… (季語) 馬追 ウマオイ】
生き残る… (季語) 馬追 ウマオイ

 


生きのこる馬追脚を伐って見す



・・・孤独なお祖父ちゃんだったからね。
兎に角、お祖父ちゃんの名前も君の名前もお父さんの名前も亡くなるまで知らなかったし、本当に回覧板に載っている姓を知っているだけだったからね…』


『それが普通ですから…自分の名前なんてどうでもいいし…』

『普通と言えるのはね、自分の名前を知って欲しいと思うのが普通なんだよ。知られなくても良いと思う方が普通じゃないんだ…プライバシー保護時代のせいもあるし、姓名判断による吉凶判断の誤解によるせいもあるけどね…』

『姓名判断なんてまったく気にしないし意味ないしね…手紙や小包がちゃんと届けば何も問題ないすね!』

『そうか…君の心は永久に家の子供でいたかったんだね…それが君の理想の時間の過ごし方だった?…理想とは言っても君のような完全なる禁欲生活は誰にも出来るもんじゃないよ?』

『禁欲じゃ無いす。性欲がまったく起きない遺伝子の病気だと思ってましたから…結婚は相手を不幸にしますからね(苦笑)』

『本当は1回だけ会ったことあるね(笑) 覚えてる…?・・・』

『猫ちゃんの事でしたね…』

『あの時、君はどうぞ探して良いですよ…と言ってくれそうだったけどね…』

『そう実はね、でも母がねぇ…父は猫好きなのにねぇ…退職してから野良まで飼ってましたね(笑)』

『お父さんとは、よく猫の話をしたなぁ…もしかして君も猫好きだった(笑)』

『えぇ…でもね母がね…』

『こっそり君の部屋に来ることも…?』

『母が仕事に出掛けたら必ずね(笑)』

『そうだったのか…そう言えば、君らが越して来た時、最初からペルシャ猫がいたね…交通事故で亡くなってからお母さんに猫の残り餌さを貰ったな…でお父さんは退職してからまた雑種のペルシャの野良猫を連れて来てね…動物病院にも抱っこしてね…』

『新築してからだけどね、母は家の中には絶対猫を入れさせなくなったんだよ…事故で死んで母はホッとしてたけど、また父がね…もう冷戦状態でしたよ』

『はた目からは猫嫌いには見えなかったし、お父さんが妻にボヤいて言ったらしいけど、二人共まさかと思ったしね…』

『父はオープンで弱点見せるけど、母は見せないから分からなかったでしょうね…』

『君自身はどっちだったの?』

『どっちにもなれない臆病者ですよ。つまり弱点だらけだから母の弱点も父の弱点も解って隠り続けて一緒に暮らすしかなかったんだ』

『要するに君は絶対に人の弱点は突かない主義をずっと通して生きて来た…』

『そう、・・・最後に自分の弱点の臆病だけを伐り棄てたかったんだ!』

『君のために馬追の句を捧げるよ…もし転生することが出来たら自分の姓名のパワーを思いっきり発揮するんだよ。みんな自分が一番苦しい時は自分の姓名の生きる力だけで生きてゆくんだ。君の魂の住所が君の姓名なんだから、チャンスを見つけたら迷わず戻っておいで…何百年かかろうと男だろうと女だろうと…』


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