マエストロ文学

第二章:崩壊

そう。クマは答えた。
答えたのだ。


…おかしい。

なぜ彼がクマと意思疎通できるのか。
彼にはわからなかった。


そんなはずはない。
何かがおかしい。


そう思いつつも、彼は今自分のいる未知の領域にもっと踏み込みたくなった。

なんだ。

なんなんだ。この渇望は。


「ついてきなよ」

彼の心を見抜いたかのように、ヒロディと名乗るクマは話しかけた。


彼の声が脳内を駆け巡る。


不意に、激しい頭痛に襲われた。
彼は後ろから殴られたような衝撃を受け、思わず眼を瞑った。


…目を開けた。



なぜだ。

なぜなんだ。


そこには、全ての生命が終わってしまった世界があった。
さっきまでの森の緑はどこへ行ったのだろう…


目の前には、ヒロディの背中しかなかった。

それも離れていく。

離れていく。


ついていこう、という感覚が彼を支配した。


それに逆らえず、彼は青白い右足を踏み出した。






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