12月の例句集
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◆ 冬椿 ◆
三人かざす火鉢小さし冬椿 阿部みどり女
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山寺や縁の下より冬椿 五十嵐播水
日あたりや蜜柑の畑の冬椿 泉 鏡花
庫裡開いて無住にあらず冬椿 木村蕪城
海の日に少し焦げたる冬椿 高浜虚子
海女解けば丈なす髪や冬椿 松下匠村
火とぼして幾日になりぬ冬椿 小杉一笑
火のけなき家つんとして冬椿 小林一茶
畑にも雑魚干場にも冬椿 深見けん二
葉籠りの花の小さきは冬椿 清崎敏郎
今は寄る船なき浦の冬椿 福田蓼汀
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赤もまた冷たき色よ冬椿 久屋三秋
辞世の句とはかくかくや冬椿 威瀬正俊
近付けば蕾勝りて冬椿 稲畑廣太郎
鶴とほく翔けて返らず冬椿 水原秋桜子
まだ明日の逢はむ日のこる冬椿 中村汀女
冬椿寝顔のままに夫逝けり 倉田静子
冬椿落ちたる音もなかりけり 鷲谷七菜子
冬椿落ちてそこより畦となる 水原秋桜子
冬椿乏しき花を落しけり 日野草城
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◆ 寒椿 ◆
寒椿しだいに雪の明るくて 横光利一
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夕月やひそかに咲ける寒椿 日野草城
火のけなき家つんとして寒椿 小林一茶
生きること一と筋がよし寒椿 五所平之助
汐入りの池あたゝかし寒椿 中村汀女
妻の名にはじまる墓誌や寒椿 宮下翠舟
寒椿つひに一日のふところ手 石田波郷
父も夫も師もあらぬ世の寒椿 桂 信子
蹲に落ちて紅張る寒椿 影島智子
寒椿落ちたるほかに塵もなし 篠田悌二郎
のけぞって鵯が花吸ふ寒椿 池内けい吾
垂れし枝反り上り咲く寒椿 鈴木花蓑
埃くさき日暮れとなりぬ寒椿 中 拓夫
寒椿しかも真白に母校なる 古舘曹人
寒椿今年は咲かぬやうすなり 正岡子規
寒椿弱音吹き消す吾子の声 牧 ひろ子
寒椿母と降り立つ無人駅 皿井節子
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寒椿朝の乙女等かたまりて 沢木欣一
寒椿柄杓に氷すくひ捨つ 長谷川零餘子
寒椿竹の枝打つ音すなり 飯田龍太
折り取つて日向に赤し寒椿 渡辺水巴
寒椿月の照る夜は葉に隠る 及川 貞
掛絵馬の風に鳴るなり寒椿 佐藤郁子
暗がりの葉を揺らぎ出て寒椿 佐々木六戈
朝の空気静かに流れ寒椿 桂 信子
海近き道の起伏や寒椿 佐藤春夫
火はわが胸中にあり寒椿 角川春樹
畳替へて家の古さや寒椿 大場白水郎
病む妻に花落すなよ寒椿 今泉貞鳳
記憶からこぼれつづける寒椿 大西泰世
赤もまた孤独なりけり寒椿 和田律子
雪晴れて大破の屋根や寒椿 西島麦南
寒椿力を入れて赤を咲く 正岡子規
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