ブック11

〜時候〜

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◆ 九月 @ ◆
時候



川えびの身の透きとほる九月かな  大嶽青児



茶畠のひかり手強き九月かな    飯島晴子



九月はや秋の暗さに灯のともる   溝口博子



猫だましと言う手もありて九月場所       波多野寿子



迷路より抜けて九月の蝉しぐれ       しらいししずみ



神の田の九月の蝌蚪の足造り   殿村菟絲子



古書市に母を誘ふ九月かな     藤田弥生



どの窓もいつか眠れる九月の夜   廣瀬直人



野にあれば九月の雲を朗読す    南村健治



ひとり身の九月草樹は雲に富み   野澤節子



九月の地蹠ぴつたり生きて立つ  橋本多佳子

※蹠 あしうら



まだ何も置かぬ九月の机なり    坂巻純子



鯖うまくなりて九月や雨ばかり   草間時彦



雨のこるべつたら市の薄九月   水原秋桜子



九月はや白をさみしきいろとなす        工藤久仁年



甦る学校町の九月かな       竹田 哲



オリオンを九月の深夜見るかなしさ 相馬遷子



革命を起こすに半端なる九月    櫂未知子



木の上に人がゐさうな九月なる   金田咲子



子規庵にしばし端座も九月かな   村上谿聲



九月来る灰皿の上に紙燃やし    岡本 眸



ほろほろと生きる九月の甘納豆   坪内稔典



生國の魚こっそりと来る九月   宇多喜代子



ひやう〜と瓢の風も九月哉     小林一茶



九月来箸をつかんでまた生きる  橋本多佳子



 
◆ 九月 A ◆
時候



石山の驟雨にあへる九月かな    飯田蛇笏

※驟雨 しゅうう



九月の森石打ちて火を創るかな   寺山修司



いちじくも九月半ばの影つくる   桂 信子



貝がらの九月の雨を溜めてをり   黛まどか



車窓うつ九月の雨は密となる    宮武寒々



陶枕のかたきを得たる九月かな   安住 敦



九月はや紅葉を流す梓川     鈴鹿野風呂


※作者は、すずかのぶろ 1887年〜1972年 (明治20年〜昭和47年)だが、梓川の地形的環境(上高地から安曇野へと流れ下る標高落差2500mの川)による季節の落差ある風景を詠んだ句で、残暑の9月に高山の紅葉の景色が見事に連想させられる。

九月の例句の最後に鈴鹿野風呂よりさらに20年前に生まれた正岡子規の句に、もっと斬新的に落差をつけて季節感を自在に表現している例句があった。




秋老て九月の月の皺寒し      正岡子規

※明治34年の作、『秋老て』で晩秋に近い九月の末の季節感で詠まれた句。

今日は子規の誕生日(ただし旧暦9月17日)で、9月19日が子規の新暦の命日になる。
季節で言うと、仲秋ではなく、晩秋10月半ばに生まれ、仲秋に没したことになる。この句は『皺』と言う表現で、昨日今日の気温の極端な落差を強引にユーモラスに表現している。

※以下の例句の季節感はさらに自在である。




花もなし実もなし枇杷の九月哉



水仙の生えそろふたる九月哉




※以下は盛りを過ぎたものの懸命な生きざまの滑稽味を風刺漫画的に表現していて切実でもある。




朝顔ヤ九月ノ花ニ耻多キ

※耻 はじ 恥



九月蝉椎伐ラバヤト思フカナ


※いっそ椎の木を伐ろうかな…とは蝉の全滅作戦だろうか、それほどまでにうるさく啼いていたのだろう(笑)



 
〜九月〜より私の好きな季語と私の俳句
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