4月の例句集

〜時候〜

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春の夜や粧ひ終へし蝋短か     杉田久女



春の夜の泊船誰か物書かむ     岡本 眸



春の夜の夫人ゆるやかに着こなせり        藤木清子



春の夜の浴槽に胎児との浮力    寺井谷子



 
◆ 春の夜B ◆
234》時候



春の夜の月さまざまな水明り    横光利一



春の夜の耳燃ゆるまで梳る     朝倉和江



春の夜や一人あんまにえし寝つき       久保田万太郎



春の夜や女を怖す作りごと     炭 太祇



春の夜を手足を使ひ赤子泣く    森 澄雄



春の夜の絵本につづきなかりけり 山田みづえ



春の夜の黒き睫毛をたてて睡る  伊丹三樹彦



春の夜の雲に濡らすや洗ひ髪  夏目漱石(39)



吾妹子を夢みる春の夜となりね 夏目漱石(34)



春の夜のしば笛を吹く書生哉  夏目漱石(31)



春の夜の琵琶聞えけり天女の祠(し)      夏目漱石(29)



ゆく春の夜の迅雷の躬にふるふ   臼田亞浪



春の夜の人参湯や吹いて飲む   芥川龍之介



春の夜の肌着をたたむ末娘     飯田龍太



春の夜の建てゝ壊した緑の家   富澤赤黄男



春の夜に讀む近松の女かな     松瀬青々



春の夜の自動拳銃夫人の手に狎るゝ 日野草城
▲俳句画像.jpg3
自動拳銃→ピストル→コルトの連想1
夫人→妻の連想2
※狎れる [なれる]
[意] 親しくなりすぎて節度が無くなること



春の夜の玻璃戸の外の波の音    星野立子



春の夜や後添が来し灯を洩らし   山口誓子



春の夜や篭り戸ゆかし堂の隅    松尾芭蕉



春の夜に尊き御所を守身かな    与謝蕪村



春の夜のみじかきは花のあたり哉  松岡青蘿



春の夜や連哥満たる九条殿     高井几董



熊坂に春の夜しらむ薪かな     高井几董



春の夜や吸物ながら馬に鞍     立花北枝



春の夜の面ざしもなし夏の月    上島鬼貫



ゆく春の夜のどこかで時計鳴る  種田山頭火



 
春の夜〜自作画像アルバム〜



◆ 春の暮@ ◆
234》時候


※ 春の暮(はるのくれ)は春の夕方の頃を表す季語。春の終わりの頃を表す季語は、暮の春となります。微妙ですが、どちらも共通する響きを感じさせます。



捨鉢に卵抱きをり春の暮      中原道夫



貝の火のまた燃え上がる春の暮  高野ムツオ



近づきて塔見失ふ春の暮      邊見京子



にはとりのすこし飛んだる春の暮 今井杏太郎



近づくにつれ塔重き春の暮     山口誓子



酒倉を杜氏と歩く春の暮      永田耕衣



能面のうすき翳りも春の暮     新島艶女



春の暮老人と逢ふそれが父     能村研三



恋人のからだの丘も春の暮     正岡 豊



門ひとつ残りつくづく春の暮    高柳重信



縞馬の縞がずれゆく春の暮    渡辺誠一郎



春の暮鴎の波に鳰の乗り      岸田稚魚



大蛸の足茹であがる春の暮     岸田稚魚



春の暮狐きて舞へ石の上      角川源義



つづく




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