6/13ﾍﾟｰｼﾞ目 ◆ 春の夜① ◆ ２３４》時候 春の夜(はるのよる)の夜は、人々が寝静まった頃を表します。よって深夜に起きている人らが主役です。 春の夜をかな文字ばかり習ひけり 山口波津女 春の夜の五右衛門風呂を召せといふ 神蔵 器 春の夜の指にしたがふ陶土かな 阪本謙二 旅人となりきる春の夜の地酒 岡本 鉾 春の夜のいつまで残す夫婦の灯 石塚友二 春の夜や籠り人ゆかし堂の隅 松尾芭蕉 流るるは春の夜みじろがぬは川 殿村菟絲子 春の夜の妻の寝嵩にかくるる子 河野南畦 春の夜や三十路に入りし爪の色 河野南畦 春の夜や児に借りて見る万華鏡 山口恵子 春の夜のつめたき掌なりかさねおく 長谷川素逝 春の夜のねむさ押へて髪梳けり 杉田久女 春の夜のアルバムに有る幾山河 渕沢信子 春の夜や背にまはりたる胃の痛み 久保田万太郎 春の夜をはかなまねども旅の空 飯田蛇笏 身籠りし子が帰りゐる春の夜 矢野芳湖 春の夜や墨に負けたる吉野紙 大石悦子 春の夜や盥をこぼす町外れ 与謝蕪村 春の夜やランプに呪文などかけて 中嶌陽子 春の夜の船のポストを尋ねあてぬ 横山白虹 耳といふものたのし春の夜の幽か 渡辺水巴 春の夜や女に飲ます陀羅尼助 川端茅舎 ※ (だらにすけ)＝民間薬で食欲不振 胃もたれ 二日酔い はき気などに効果 春の夜や子をあゆまする古畳 長谷川春草 春の夜の子を踏むまじく疲れけり 石田波郷 春の夜や皿洗はれて重ねられ 川崎展宏 春の夜や妻に教はる荻江節 夏目漱石 時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎 帯とけば足にまつはり春の夜 高橋淡路女 春の夜の汝が呱々の声いまも新た 中村草田男 (末弟の門出) 春の夜や草履に軽き町歩き 松浜 春の夜や足洗はする奈良泊り 召波 春の夜のそこ行くは誰そ行くは誰そ 子規 (亡き古白を思ひいでゝ) 春の夜や瓢なでても人の来る 小林一茶 春の夜はたれか初瀬の堂籠り 曾良 ◆ 春の夜② ◆ 春の夜や雨をふくめる須磨の月 青蘿 春の夜や柳かくれの細ともし 紅葉 春の夜やぬしなきさまの捨車 加藤暁台 春の夜の女とは我がむすめかな 宝井其角 春の夜という豊潤の星座かな 中川子桜 春の夜の人と生まれし泪かな 橋詰育子 枝すでに後悔のいろ春の夜に 中田 剛 春の夜の乳ぶさもあかねさしにけり 室生犀星 春の夜をうつけしものに火消壷 原 石鼎 春の夜や都踊はよいいやさ 日野草城 春の夜や宵あけぼのゝ其中に 与謝蕪村 春の夜や鼓しらべる誰が家 几菫 春の夜も傾く月や連歌町 召波 春の夜や檸檬に触るる鼻のさき 日野草城 春の夜のわれをよろこび歩きけり 日野草城 春の夜のとりちらしたる机上かな 星野立子 春の夜や海苔の香走る台所 青木薫風郎 春の夜の灯影眩きのぼせかな 蚊斎 春の夜の夢に疲れてしまひけり 若林かをる 春の夜や昼雉子うちし気の弱り 炭 太祇 誰園ぞ月夜春の夜梨の花 鉄僧 春の夜の太郎冠者めく夫の酔 伊藤京子 山の墓地乾きて春の夜に浮かぶ 右城暮石 春の夜も亦玄々と言ふべけれ 徳永山冬子 春の夜の香なり花の香のみに非ず 徳永山冬子 春の夜や心の隅に恋つくる 吉川五明 春の夜や衣桁の裾にひそむ鬼 高田蝶衣 春の夜の氷の国の手鞠唄 飯田龍太 春の夜や土につこりと寂しけれ 永田耕衣 春の夜や寝れば恋しき観世音 川端茅舎 春の夜のすこしもつれし話かな 久保田万太郎 春の夜や灯を囲み居る盲者達 村上鬼城 春の夜や屏風の陰に物の息 正岡子規 春の夜の喪服着たまゝ寝そべりし 久米正雄 春の夜の鐘うなりけり九人力 尾崎紅葉 春の夜の枕にしたり酒の反吐 尾崎紅葉 春の夜や歯に咬みあてし貝の珠 幸田露伴 春の夜や階多き蓼雨亭 田中冬二 春の夜や小暗き風呂に沈み居る 芥川龍之介 春の夜や粧ひ終へし蝋短か 杉田久女 つづく [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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