読み切り・短編

★ 白の国のお姫様(短)
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第一話

――それは、幼き日の思い出。

キッカケはほんの些細なモノ

空から降ってきた一枚の写真

そこに佇む不機嫌そうなお姫様に
身分違いの恋をした


大人になった俺は
彼女を迎えに行った。

『欲しいモノは奪い取る』

それが、盗賊の流儀だから…――


「ヒュウ♪ ここまで来られた奴ぁ初めてだぜ。」

セクシーだけどやけに低い声。
振り返った俺が見たのは、ものすごい美人…
いや、美人だけれど。

「…お姫様…?」

艶やかな黒髪に透き通るような白い肌。
大柄な俺にしてみりゃ確かに腰とか手折れそうなくらい細いけど、いやいややっぱりどう見ても。

「残念だったなコソドロ野郎、俺は男だ。」
「うえぇっ!?…でも、確かにこの写真じゃあ…」

いまだ肌身離さず持っている写真をまじまじと見つめ、目の前の現実と見比べる。

「チッ、…あぁ、確かにこりゃ俺だな。ガキの頃周りがふざけてこんな格好させやがってよ…」

ありゃあ恥ずかしかったぜ、と語るお姫様の横で呆然とする俺。

…あ、今なんか俺の中でなんか崩れた。ガラガラって音がした。

ホントなら美しく成長したお姫様を格好良く連れ去って、ロマンチックに愛の逃避行を…

「…ま、そう気を落とすな。今なら見逃してやるからよ、おとなしくシッポ巻いて帰れ。」

あ、やめて。
初恋の人の面影が残る顔でそんな事言われたら泣きそう。

「…ここで帰ったら盗賊の名が廃る。」
「へ?」

こうなりゃヤケだ。
言うが早いか俺は姫君を…文字通りお姫様抱っこで抱え上げた。

「うわ、軽っ。ちゃんと食べてる? お姫様。」
「なッ…!?」

流石に男として聞き捨てならなかったらしく、腕の中で暴れようとするけれど、

「……じっとしてないと、落ちるぜ?」
「ちょ、…待っ、…ここ、何階だと…!!」

部屋の窓を蹴り破り、お宝を確かと抱き締めて、俺は城を飛び出した。

「――――っ!!」

声にならない悲鳴をあげ、ギュッと俺にしがみつく姫を不覚にもちょっと可愛いと思ってしまったのは、内緒の話。


―あとがき―

フッと思いついてしまった設定から妄想のおもむくままに描いた短編。
裏って言っても温いです(笑)
スノウ姫の元ネタは一応白雪姫なのですが、元ネタが原型をとどめないのが万十郎クオリティ。

そんな感じでつづく!


万十郎侍。
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