『ときめき』のお部屋

A〜海辺の町〜
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町の入口。
彼女は、大きな立て札を前に、立ち尽くしていた。
「…え?」
そこに書いてある文字を、何度も何度も確認する。
もしかしたら見間違いかも、と僅かな望みに縋ってみるが、やはり結果は変わらない。
「どうした、イリス?」
少し遅れてやって来た仲間達が、ただならぬ様子のイリスに尋ねると、彼女はゆっくりと振り返り、
「レグナス君…」
と、先程までのウキウキ感が消え去ってしまった声で、何かを言いかけた。
しかし、その時。
「あーっ! お、お前は伝説の勇者!?」
いきなりの大声に一行の視線は一人の男へと向けられた。
いかにも力自慢、いかにも海の男な、小麦色の大胸筋が眩しい筋骨隆々たる男だった。
「こんな時に…久し振りの挑戦者か。」
レグナスは、やれやれといった感じに言った。
一年前、魔王を倒して伝説となった二人の勇者。
腕に自信のある者は皆、どういう訳か彼らに挑むようになっていた。
「というわけで勝負だ!」
「何がどういう訳だよ…ったく、この程度ならオレが…」
「どいて。」
一歩前に踏み出した彼を制止したのは、既に大剣を抜き放ったイリスだった。
町に着くまでのごきげん少女と本当に同一人物なのかと疑う程、今の彼女は明らかに様子が違っていた。
「何が…あったんですの?」
「…さぁ。」
ファリアとザードも首を傾げるが、とりあえずこの場は任せる事にした。
「こんな所で戦えるとは、ラッキーだぜ。いくぞ、勇者っ!」
男がこう叫ぶのと同時に、イリスは地を蹴った。
次の瞬間には、決着ははっきりと着いていた。
「へ…?」
一瞬の事だった。
彼女は男の体勢を崩すと一気に地面へ叩きつけ、喉元に剣を突きつける。
「もう、終わり?」
男は目先の大剣とイリスの顔を信じられないと言わんばかりの表情で見た。
「…消え失せてくれないかな?」
ひやりとするのは、僅かに触れる刃の感触のためだけではないだろう。
冷たく笑う彼女には、もはやぽわぽわ少女の原形すらも残っていない。
「ひっ…ひぃぃぃっ!?」
最後の一言がとどめとなり、男は一目散に逃げ出した。
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