『ときめき』のお部屋

A〜海辺の町〜
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それは、町に着く少し前のこと。
イリスはにこにこと、ご機嫌な様子だった。
「ふふふっ♪ お魚料理、楽しみだなぁ☆」
一歩、また一歩と町に近付くたび、まだ見ぬご馳走を思い浮かべて彼女は胸を高鳴らせた。
食べるのはもちろんだが、こうして想いを巡らせているのもまた、至福の一時である。
「シチューにスパゲッティ、それともスシ? ねぇ、レグナス君。」
「ん? あぁ、島の料理か。それもいいかもな。」
ちなみに“スシ”とは、忍者という影の一族が住む島に伝わる料理だ。他にも島には大陸とは違った独特の文化がある。
「…スシ?」
その単語に、ザードがぴくりと反応を見せた。
「どうしたのザード君、考え込んじゃって。」
「……いや、何でもない。」
彼はすぐに無表情に戻ると、くるりとレグナスに向き直った。
「しかしお前なら、どんな料理もお手の物なのだろうな。」
「へ?」
きょとんとするレグナスに、イリスが付け足して言う。
「そうだねぇ。しかも、あの町のお魚はすっごく美味しいんだよ♪」
「あら、それは期待できそうですわね。」
ファリアの言葉に頷くと、ザードは真剣な表情で口を開いた。
「…やはりレグナス、お前は良い嫁に…」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!!」
最近ずっと、こんな調子である。
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