『ときめき』のお部屋

B〜船出〜
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風が、独特の香りを乗せて吹き抜ける。
ここは大陸東の最果てにある、ちいさな港町。レン達が『剣と魔法の大陸』に行くため最初に定めた目的地だ。
「ほわぁ〜…活気ある町でゴザルなぁ〜」
市場では他の大陸からの輸入品や、港町ならではの新鮮な魚介類が売られていて、多くの人で賑わっている。
《は〜やれやれ、田舎者丸出しだねぇ、シュウ君。せいぜい迷子にならないように…っと、むしろその方が好都合か…いやいや、存分に楽しんでくれたまえ★》
「拙者しっかりとレン殿の手を握っているから迷子にはならないでゴザルよ☆」
不気味に響く男二人の笑い声。あまり一緒に歩きたくはないが、迷子になられても困るので仕方なくレンはシュウの手を引いて歩いている。
「……早く船の手配をせねば…」
いよいよ、海を渡り『剣と魔法の大陸』…伝説の勇者がいるという大陸へ向かうのだが、見知らぬ土地に想いを馳せるゆとりは今の彼女にはない。
「レン殿! 見た事ない果物が売ってるでゴザルよ!!」
「ああもう、後で買ってやるからあまりそっちへ行くな!!」
今あるものは、両肩に重くのしかかる疲労感のみであった…
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