『ときめき』のお部屋

A〜ランチタイム〜
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「ったく、まだですのー?」
「影も形も見えない。だいぶ先と思って、間違いないな。」
ファリアとザードのこんな会話も、すでに十数回繰り返されている。
村を出発して、早五時間。
朝早くに出たというのに、今はもう太陽が真上に来ている。
「ねぇ、この辺りでお昼にしない?」
「そうですわね。ずっと歩き通しで、軽く休憩もとりませんと。」
「腹が減ると凶暴になるからな、ファリアは。」
そう言ったザードをファリアが物凄い形相で睨むのと、彼がさっと目を逸らしたのはほぼ同時だった。
「お〜い、遊んでないで準備手伝ってくれよ〜」
「仲がいいんだね、二人とも。」
下に敷くシートを広げ、てきぱきと食事の用意を進めるレグナスと、仲良し二人組をのほほんと見守るが、彼を一切手伝おうとしないイリス。
「…オレは一応、お前にも言ってるんだが?」
「んー? ああ、そっか。ゴメンゴメン…よっこらしょっと。」
彼女は背負っていたリュックを降ろすと、中にある物を取り出した。
巨大な剣を振り回す彼女は明らかにレグナスよりも力仕事に向いているため、二人だけで旅をしていた頃から荷物持ちの役割をしていた。
本人としても不満はないようで、重い荷物だろうとむしろ喜んで引き受ける。
そうして、リュックの中から出て来た物は…
「あら? お弁当箱に水筒…どうしたんですの、これ。」
中身はかなり手の込んだもので、色とりどりのおかずがバランス良く敷き詰められている。
「手作りなんだよ…レグナス君のね★」
イリスの一言で、弁当箱を覗き込んでいた二人の視線が一斉に一人の少年へと向けられる。
「な、何だよ…オレが作っちゃあ悪いか?」
ファリアは、豪華で美味しそうな弁当とレグナスの顔を交互に見、
「…いえ、伝説の勇者様の意外な特技に、素直に驚いただけですわ♪」
にんまりと、嫌な笑みを浮かべた。
「さぁ、それじゃあいただきましょう! 勿体なくも勇者様のて・づ・く・り・ですものねェ★」
「ぐっ…こんにゃろう…」
実にほのぼのした会話で、昼食は始まった。
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