『ときめき』のお部屋

A〜ときめきの出会い〜
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「見つけたぞ勇者! 勝負だッ!!」
「またか…」
勇者は正直うんざりといった顔をした。
レグナス・ブルーストーム。
ややネコっ毛気味の黒髪に、ぶかぶかの帽子を被った、小さな少年。どこからどう見ても10歳かそこらのお子様だが、本物の勇者だ。その目に宿る知的な光は、子供のそれとは違う。
「おいイリス、また来たぞ。」
レグナスはそう言うと、一人の少女を振り返る。
イリス・マリス。
彼女もまた、生きながらにして伝説となった勇者だ。ふわふわの長い髪を三つ編みにした、17歳のぽわぽわ系少女。
腰にはその外見に似つかわしくない大剣を携えている。
魔王が倒され、平和な世の中になって早一年。魔物も弱体化した今、強さを求める者達は勇者に戦いを挑むようになった。
それにしても今月に入って八人目。挑戦を受ける側としては、いい迷惑だ。
「はぁ…困ったねぇ、のんびり二人旅も出来ないよ。」
イリスは小さく溜め息をつくと、腰の剣を抜き放つ。
「…ケガしても、知らないよ…?」
クスクスと笑う彼女は、先程までとはまるで別人のようだった…。
毎度の事ながら、この時の彼女には恐怖すら感じる、とレグナスは思った。
幅広の大剣をまるで木刀でも扱っているかのように軽々と振り回し、舞うように優雅で華麗な動きには一切の無駄がない。
そして今日も、なかなか強さに自信があるであろう巨漢が、あっさりと彼女に倒されるのだった。
剣を腹に叩き込まれ、倒れ伏す男に、
「ん〜、35点。動きが単調すぎるから、すぐ先を読まれちゃうよ? こんな風にね♪」
と採点までつけて…
にっこり笑うイリスは既に元のぽわぽわ系少女に戻っていた。
そんな一連の出来事をただ傍観していたレグナスだったが、
「お見事! さすがは勇者様、ですわね☆」
突然の拍手と声。
見るとそこには、新たな人影がふたつ。
「申し遅れましたわね。わたくしはファリア・メルフォンド。旅の美少女ですわ。」
およそ長旅には向かないであろうフリルやリボンのヒラヒラした服で、いかにもお嬢様といった感じの外見の気の強そうな少女はそう言うと、微笑んだ。
「…“美”は余計だと思うが…」
ファリアの横から、小さくつっこみが入る。
「うっ…それよりザード、貴方も自己紹介なさい。」
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