『竜剣』のお部屋

4〜忘却の彼方に〜
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昔、静かに暮らしていた一族がいた。

高い身体能力と独自の文化をもち、自然と通じる事が出来るという。

彼らはさらに細かく分かれ、

『風詠』〜カゼヨミ〜

『水鏡』〜ミカガミ〜

『紅蓮』〜グレン〜

『地守』〜ツチモリ〜


かつて滅びた竜族のように、それぞれ特化した属性ごとの里で暮らしていた。

蒼真もまた、その一人であった。



「さあさあ皆様お立ち会い! 世にも稀な一芸をお目にかけましょう!!」
元気いっぱいに声を張り上げる少年がいた。
通り過ぎる人々も足を止め、何事かと見入っている。
そして彼らもまた例外ではなかった。
「蒼真、何かやるみたいですよ!」
チリン、と鈴の音を鳴らし、ポニーテールの少年…失礼。少女が立ち止まった。
「大道芸か。あんな子供が、珍しいな…」
蒼真も雫姫に腕を引かれ、人だかりの中心に目を向ける。
見た目13、14歳ぐらいに見える。栗色の髪に琥珀色の目をした、愛嬌溢れる少年がそこにいた。
ふいに、ぼんやり彼を見ていた蒼真と少年の視線がぶつかる。
「それでは、そこの仏頂面したお兄さん!」
「…ああ?」
条件反射でギロリと睨む、仏頂面したお兄さん。
だが少年は構わず、
「このナイフを、僕めがけて投げてくれませんか?」
「なんで俺がンな事…」
返って来たのは、無邪気な笑み。
「お願いします☆」
「…っ」

おもむろにそれが過去の映像と重なった。
気の遠くなるような、遠い昔の…

「ダメ?」

いつの間にか目の前で蒼真を見上げる、琥珀の瞳。
「わかったよ、やりゃあいいんだろ?」
我に返った彼は、しぶしぶナイフを取り上げると、構えた。
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