『竜剣』のお部屋

23〜約束〜(流血表現注意?)
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――人里から外れひっそりと佇む遺跡で、ひと振りの剣と出会った。

剣は、泣いているようだった。

哀しくて、寂しくて、声もなく泣いている剣。

俺はその剣の物語を、短調のメロディに乗せて歌った。

誰かが『彼女』の存在に気付いてくれるように…――




カーツの屋敷は、不気味なくらい静まり返っていた。
かつて雫姫をさらったラマネの、豪奢で悪趣味な屋敷とは違い、無粋な出迎えに遭うこともなく。
「楽といえば楽なんだが…」
「…怖い、です。」
雫姫はぽつりと呟いた。
辺りは不自然なくらいの静寂に支配されていたため、その声は存外に響いた。
「雫姫は心配性だな。俺がお前を守れないほど弱いと思うか?」
「……」
「無事帰るんだよ。アーリュオンも、お前も。」
優しい大きな手が頭を撫で、雫姫の心配を取り払おうとする。
けれどもそれは簡単に消えるものでもなく。
「…蒼真も」
「うん?」
「蒼真も、一緒です。一緒に、無事に帰るんですよ?」
黒曜の瞳が拭いきれない不安を訴えた。
その姿は強大な力をもつ伝説の魔剣ではなく、孤独に怯える一人の少女そのもの。
蒼真はそんな雫姫に出来るだけ優しく笑いかけた。
「…それじゃあ雫姫、約束しような?」
「やく、そく?」
そう、と頷くと右手を差し出す。
「ほら、手ぇ出せ。」
「は、はい。」
蒼真が小指を立てると雫姫もおずおずとそれを真似る。
ふたつの手の小指同士がそっと絡み合った。
「蒼真、これは?」
「ゆびきり…約束をする時の儀式だ。これをやったら絶対約束は守らなきゃな。」
「ゆびきり?」
きょとんとする雫姫に蒼真は続ける。
「必ずみんな一緒に帰る。ウソ吐いたら針千本、だ。」
「は、針千本!?」
物騒な単語に雫姫はぎょっとした。
「約束守れなかった時の罰だ。俺は絶対飲まねぇけどな。」
「そ、そんなの飲んじゃダメです! 痛いですよ!!」
「…ん、だから守るんだよ。約束は守るためにあるんだから。な?」
そう言ってみせればゆっくりとした頷きが返ってきた。
「よし、いい子だ。んじゃ行くぞ。俺の側を離れるなよ?」
「は、はいっ!」
ぱたぱたとついて来る足音を後ろに聞きながら、蒼真は足を進める。
(ちくしょう…嫌な予感がしやがる)
不安を感じ取っていたのは、彼も同様だった。
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