『竜剣』のお部屋

21〜空虚なる収集家の道楽〜
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――美しい。

そう思ったモノは、手に入れたくなる。

珍しい宝石、黄金の彫像?…そんなモノには興味がない。

私の興味は『生きた宝』。

生ある者の輝きは、どんな美術品よりも美しい。

そして、それを手に入れる為ならば…


―――

「うぅ…」
暗く冷たい空間に響く声。
身体を起こそうにも力が入らず、僅かに身動ぎすればジャラリと鎖が音を立てる。
(そうか…俺、変なヤツに捕まったんだっけ…)
首につけられた首輪には、鈍い光を放つ紅い石。
風の竜帝、アーリュオンですら動きを封じられる古の秘石『竜封石』である。
(くそ、…何千年経っても忌々しい石だ…)
遠い昔、強大な力をもつ竜が人間に滅ぼされたのもこの石の働きによるものが大半。
かつての苦い記憶を思い出し、アーリュオンの右目の傷が疼いた。
「…ここ、どこだ…?」
辺りを見回せば見えるのは重い鉄格子。
檻の中、というのはわかるが周囲から感じられる複数の気配は、見張りの者とは思えなかった。
なら、他に囚われた者がいるのか?
「目が覚めたか。」
「!」
はっきりしない意識で思考に気を取られて、近付く者の存在に気付けなかった。
己の不覚を悔やみながら顔を上げると、そこにはランプの灯。
「…アンタか、俺をこんな所に連れて来たのは…色男さん?」
「カーツ・シュッツバルトだ。お初にお目にかかるね、美しき竜。」
落ち着き払った声に冷たい瞳…カーツは恭しく一礼した。
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