1/5ページ目 ―――大好きなあの人は、自分を庇って倒れた。 そして自分も、成す術なく力尽きた。 世界が暗転する直前に見た空は、哀しい色に染まっていて… 慟哭する風に僕は自分の無力を思い知ったんだ。――― 柔らかな風がふわりとカーテンを揺らし、陽光を誘いこむ。 メリエーゼ、という街の宿の一室で少年は朝を迎えた。 「…なんか、変な夢観た…?」 栗色の髪に、琥珀色の瞳。 旅芸人の少年コハクは眠い目を擦りながら閉め忘れた窓に視線を移した。 (…何の夢だったかなぁ…) 覚醒していく意識とは反比例して、薄れていく夢の余韻。 (なんだろう……もう思い出せないや。) 覚えているのは、決して良い夢ではなかったという事。 焼けつく風、戦場の空気。 そんなモノは全く知らない筈のコハクだったが、不思議と既知感があった。 夢特有の馴染んで納得してしまう、あの妙な説得力とはまた違った感覚。 そして何故か、そこにいた『自分』以外の人物も、知っていた気がするのだが… 「ん〜……あ、このニオイは…」 ほのかに漂う香りに、コハクの思考は中断された。 なんとも食欲をそそられる香しいそれに、食べ盛りの少年は小難しい悩みもどこへやら、澄んだ瞳を輝かせる。 「やたっ! おかみさんの朝ご飯〜☆」 もはやどんな夢を観ていたかなんてどうでも良くなったコハクは、喜び勇んで部屋を飛び出し食堂へ向かう階段を降りた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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