『竜剣』のお部屋

1〜滅びし血が交わる時〜
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―――長い長い時が過ぎた。
どのくらいかは、わからない。
もう自分が何歳か数えるのも馬鹿馬鹿しくなって、やめてしまった。
周りがどんなに変わっても、変わらない…変わる事のない自分。
時を忘れてしまったかのように、老いる事もなく、ただ気の遠くなるような永い間、取り残されてしまったかのように…
それは、果たして生きていると言えるのだろうか?




決して人を寄せ付けない、険しい道の最果てにひっそりと佇む遺跡の中を、青年…蒼真はひとり進んでいた。
風の噂に聞いた、『魔剣』の存在を求めて。
「ここか…」
その一振りに、強大な力を宿すとされる魔剣。
最後にこれを手にしたという者は、遠い昔に命を落とした。

『魔剣』自身の力によって。

…それは、到底人の手には扱えない代物。
欲望のままに手にした者達には例外なく死がもたらされ、使い手のないまま放置された剣は、長い時の中で人々の記憶から薄れ…

ある時は古い文献から。

またある時はバーの客達の冗談混じりの噂から。

幾つもの話に従って探してみても、剣は見つからなかった。

最後に聞いたのは、道端で歌っていた男から。
往来でギターをかき鳴らし、やかましい事この上なかったのだが、どこか引っ掛かる、あの歌声。

記憶の中の彼は蒼真に気付くと、ニヤリと笑みを見せた。

「…変な奴だったな…って、そんな事はどうでもいいか。」
そうまでして青年が求めるものは、魔剣の力などではない。
魔剣によってもたらされる、死。
あるかどうかすらも怪しい物の力など、正直半信半疑であった。
だが…
「もし、これで死ぬ事ができたら…?」
蒼真は不敵に笑う。
「…面白ぇじゃねーか。殺せるモノなら殺してみろよ。」
その話が本当なら、この永くどうでもいい時間から解き放たれる。
嘘だったら、またダラダラと生き続けていくだけのこと。

それだけだった。
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