『竜剣』のお部屋

14〜失ったものと得たもの〜
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故郷や皆の敵は、既に遠い時の流れの向こう。

もはや己の手で裁くことは叶わない。

復讐に興味がない、と言えば嘘になる。


…けれども…
そんな事をしたって、故郷は、あいつらは帰って来ない。


―――

すっかり瓦礫の山になってしまったラマネ邸跡。

雫姫を誘拐した成金、ラマネを出すべき所に突き出すと、これまでにも相当悪い事をして私腹を肥やしていたらしい話が判明した。
「ただじゃあ済まないだろーな、あのオッサン。」
「ま、当然の報いさ。」
連行されていくラマネを横目に、眼帯の青年は笑った。
「あの方は、どうなるのですか?」
「悪い事をしたから、その分の罪を償うんですよ。」
雫姫の問いに、ようやく調子の戻ったファナンが答えた。
("竜封石"…とか言ったな。)
戦いの最中、ファナンを無力化したモノの名前を、蒼真は思い出す。
彼や眼帯の青年はそれに近付く事が出来ないと言ったが、蒼真や雫姫には何の影響もなかった。
「ファナン…それに、アーリュオン…とかいったな。」

自分達の行く先に現れて、助言を授けてくれた事もあった。

目の前で圧倒的な力を見せつけられた事もあった。

そして…今回の事。

「お前達は何者なんだ?」

正面からそう尋ねると、アーリュオンの紅眼がすうっと細められた。
「…お前、俺の名前に覚えはねーのか?」
「アー…リュ、オン?」
聞かない名前だと、蒼真は思った。
だが暫くして、思い出す。
「…あ」

…遠い昔に、一度だけ。
朦朧とした意識の中で、聞いた声。

―俺はアーリュオン。聞こえているかどうかはわかんねーけど…―

そう残して飛び去ったのは、何だったか。

「思い出したか?…俺達は竜だ。滅ぼされた竜の生き残りだよ。」
「竜…!?」
ああ、と頷き、アーリュオンは蒼真を見据える。
「…そして、蒼真…お前をそんな身体にしたのは、俺だ。」
その発言に、青年は己の心臓が騒ぐ音を聞いた気がした。
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