『ぶら☆夢』第二部屋

\〜王様と兵士〜
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第九話


「うっ…ここは…?」
暗く冷たい闇の中で、ラルゴは目を覚ました。
先刻までいた筈のフェルマータ城とは明らかに違う、見知らぬ場所。
といっても、辺りを見回した所で近くの物しか見えないのだが…
「えーと、俺は確か…」
考える時の癖で顎に手をあてようとするが、それは叶わなかった。
代わりにジャラ、と金属音が響く。
「……あれ?」
それは記憶を手繰り寄せるまでもなく、ラルゴに今の立場を自覚させた。
「部下を人質にとられて捕まった、でしょ?」
「!」
「いい眺めだよね、鎖に繋がれた王様なんてさ。」
顔を上げれば、山吹色の髪に氷の瞳をした青年が自分を見下ろしていた。
「部下なんて取るに足らない手駒だよ。そのために捕まるなんて、本当にお優しい。」
「あんたは、城を襲った…アルトとか言ったか?」
静かに燃える炎を宿す銀の瞳が鋭く睨み上げると、アルトは冷たい笑みでそれを返した。


ほぼ同時刻、クレッシェンドの城内では。
「うわぁぁぁんラルゴ王様が〜!!」
兵士Aことアルペジオは、城に辿り着くなりその場にいたリュートに泣きついた。
「うわ! ちょっ…落ち着け!!」
「ラ〜ル〜ゴ〜さまぁぁ!! …ぎゃふんっ!?」
「アル、やめろ! …御無礼をお許し下さい、リュート王子。」
相方…もとい、彼の相棒である兵士B、ベースはアルペジオを慌ててリュートから引き剥がすと、その場に跪いた。
「ラルゴ王に、何かあったのか?」
「……実は…」
説明しようとした瞬間、ベースの目から大粒の涙が零れた。
「お、お前まで!?」
「うっ…ラ、ラルゴ様は…俺達を、庇って…っ」
ただならぬ事態を匂わせる言葉に、リュートの顔が険しくなる。
と、そこに。
「ただいま〜」
「どうした、リュート?」
近場の魔物退治から帰った速水達が、ぞろぞろとやって来た。
「…丁度いい、お前達にも聞いてもらおう。」
リュートはそれを認めると、改めて兵士達の方へ向き直る。
「落ち着いて、ゆっくり話せ。フェルマータで何があったのかを…」
思わず息を呑む程の気品と威厳をもった目が、兵士に平常心を取り戻させる。
やがて、意を決した二人はゆっくりと口を開いた。
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