『ぶら☆夢』第二部屋

XXXVI〜これからのこと〜
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第三十六話


侵略者との戦いも終わり、ラルゴも無事にフェルマータ城へ帰っていった。
そして速水達に再び日常が戻り…
「遅刻遅刻! いってきまーす!!」
騒々しく玄関から飛び出す速水の口には焼きたてのトーストがくわえられていた。
「ったく何度も起こしたのにこれだから速水は…急ぐぞ。」
「言われなくてもそうするっつの!」
やれやれと肩をすくめて呆れる鈴原が次いで出てくる。
そう、これが速水達の日常…
「んなワケあるかぁ!」
と、速水はおもむろに虚空にツッコミの手を振るった。
「どうした速水。」
「どうしたもこうしたもあるか何だこのわざとらしい場面転換は!? そもそもオレそんな遅刻ギリギリに起きた事ねぇしトーストくわえて飛び出すとかそんなベタな登校しねぇよ! 途中まで乗ったオレもオレだけどな!!」
そこまで一気に言い終えるとぜぇはぁと荒い呼吸を繰り返す。
すると鈴原は腕組みをして頷いて、
「うむ、あとは曲がり角で転校生とぶつかれば完璧だな。」
そう、言った。
「朝のホームルームで紹介されて知り合いみたいだからってお隣同士の席にされるんだろ知ってる!」
「知ってるなら話は早い。」
「ぐおぉそうだけどそうじゃなくてだなぁ…!!」
どうにもこうにも伝わらないもどかしさに速水は頭を抱え悶える。
いや、さらに悩ましいのは恐らくこの美しい幼なじみが速水の意図を知った上でこう返しているであろうことだ。
回りくどいのはやめて直でいこう、と速水は思った。
「何普通にここから始めてんだよ? あれからどうなったか説明なしか?」
「おお、なんだそんなことか。」
ポンと手を打つ鈴原に喉まで出掛かった「白々しい」の言葉。
「操られていたオルフェを元に戻して黒幕の『影』をみんなでボコった。そこまではいい。問題はそこから先の場面だろ。」
「ああ、それは…」
彼女は目を閉じて一呼吸おくと、静かに口を開いた。
「ぶっちゃけ地味な場面だったから省いた。」
「地味とか省いたとか!?」
よろめいた拍子に電柱に頭をぶつけたのだろう鈍い音がした。
痛みに負けず、すぐさま速水は鈴原にくってかかる。
「んなワケねーだろ! むしろここ省いたらこれまでの数話分なんのために戦ってたんだよ!!」
「すまん冗談だ。」
あっさりとそう返されて勢い余った速水はその場にずっこけた。
「じょ、冗談ってお前…」
「ホントはあの後少しばかりお子様には見せられないオトナな展開が待っていたためカットしただけだ。」
「って舌の根も渇かないうちに大ボラ吹くなぁぁぁ! それこそありえねーよ!!」
確かに愛だの恋だのそういう話題に片足程度は突っ込んだかもしれないがラルゴとオルフェではどう一足飛びに進んでも今までが今までなだけに鈴原の言うオトナな展開にはなり得ない、と流石の速水でもわかる。
「っていけねぇ、こんな事してたらマジで遅刻っ…」
騒いでいる割には実はちっとも足は進んでいなかった速水は我に返ると学校への道を行こうとする。
と、
「ちなみに今日は休日だけどな。」
鈴原のこの一言で先程よりさらに派手によりベタにずっこける羽目になった。
「はっはっは。引っかかったな速水。」
「最初から最後まで茶番かよ! むしろここの場面いらねぇよ!!」
速水の反応に満足したのか鈴原はニヤリと不敵な笑みを見せた。
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