1/5ページ目 第三十四話 形のない"影"が昏くオルフェに囁く。 『欲しいモノは奪え。世界も、ラルゴ王も。』 声は絶対的な響きをもって、彼女の頭の中に浸透していく。 「う…ぁ、私は…っ」 「オルフェ、そんなヤツの言う事を聞くなっ!!」 地に膝をつき、頭を抱えて苦しみだす彼女にラルゴの声は届いていないようだった。 オルフェを取り込む影がニヤリと笑ったように見えた。 『…無駄だ、ラルゴ王。オルフェは逆らえない。そういう風になっているからな。』 「なんだって…!?」 『この私の手足となるべく生み出された従順な人形、それがコイツらだ。』 「人形…生み出された、って…」 ラルゴはオルフェと、驚きに固まっているロンドを見る。 どうやら彼等もその事実は知らないようだ。 「…そうやって他人を操って、自分はずっと高見の見物してた訳か。自分じゃ何も出来ない、って事だな。」 影はそれに応えない。 「おまけにその人形とやらも、今じゃしっかりと自我を持って自分の意思で動ける。このロンドみたいにな。」 ラルゴの言葉にロンドは我に返った。 振り向くとフェルマータの王が優しく頼もしい笑顔を見せる。 「…お前さん達は人形じゃない。きっとこれから侵略なんかとは違う、自分の道を見つけられる。」 最初は本当に人形のように、与えられた『侵略』という指令をただ実行しようとしていたのかもしれない。 けれども明るい陽の下に出て、さまざまなものに触れて、彼等も自分なりの心を形成していったのだろう。 偏った知識のせいで、侵略という行為に疑問をもつまでに至らなかったようだが。 そう、ラルゴは思った。 「ラルゴちゃん…」 ロンドの涙腺がみるみる緩み、金色の目が潤む。 この男は特に異世界にいた時間が長かったためか、それとも元々の性格か、感情表現もややオーバーなくらいに豊かだ。 「ありがとうラルゴちゃん、愛してるっ☆」 「あはは…人形ならこんな事言えないよな?」 『…やはり危険だな、ラルゴ王…』 影は低く呟くと、スウッとオルフェの中に入り込む。 すると苦痛に蹲っていた彼女が顔を上げた。 「オルフェっ!?」 そして朱の瞳が妖しく光ったかと思えば、途端に世界がブラックアウトした。 …否、そう思わせるほど圧倒的な、無数の漆黒の茨が生き物のように襲いかかってきた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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