番外編

【〜狼達の出会い〜他コラボ・音印さんへ
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〜狼達の出会い〜


人里離れた遺跡の最奥。

青年は、一人強大な敵に立ち向かっていた。

手には得意武器のトンファー。だがそれも自分よりも遥かに巨大な異形の獣に通じるかどうか。

「くそ、万事休すか…」

髪と同じ金の瞳が、チラリと視線を後ろに向ける。
今の彼…ルーツにとって、この戦いでどうしても退けない理由へと。

「ファング!」
「うっ…こんな、時に…っ!」

息も荒く横たわる、黒灰色の髪の男。
アイスブルーの瞳に今は力がなく、苦痛に表情を歪めている。

『困ったね、頼みのファングがこれじゃあ…子犬君には全くと言っていい程期待出来ないし、このままじゃあファングが危ない。』
「おい待てコラ。」

嫌味と棘をたっぷり含んだ口振りでひょっこり現れたのは、手乗りサイズの緑の球体。
白い羽を生やし、作り主と同じ紫の目をした魔導サポートアイテム“シエン君”。
天才魔法技師クレインの自信作で、そこから聞こえる声も彼のものだ。

「だったらアンタ何とかできんのかよ!?」
『残念ながらあの魔物には魔術は効かないんだ。』
「人の事言えねーじゃんか…わっ!?」

―グォォッ!!―

魔物の鋭い爪がルーツとシエン君の間を豪快に薙ぐ。
咄嗟に飛びのかなければ、その場で命を奪われていた所だ。

「あ…っぶな!!」
『子犬君、ちょっと時間稼いでてね☆』
「へ?」

言うなりクレインは戦いの場から少し離れた所で安全を確保する。

『……あ、もしもしレディア? うん久しぶりー。悪いんだけどさ…』
「うぉぉい!? アンタ誰と話してんだ!!」

その間も容赦なく襲い来る魔物の猛攻をどうにか防ぎながら、ルーツは必死に時間を稼いだ。

「…くっ、何だかわかんないけど、早くしてくれよ?」
『言われなくても!』

瞬間、薄暗い遺跡内が光で満たされた。

《ガアァァッ!?》
「! なんだ!?」

闇に慣れた身には強烈過ぎる輝きに魔物は悲鳴をあげる。
反射的に目を瞑ったルーツが徐々に回復する視界の中で見たモノは…

「あ、あれ? ここどこ?」

白髪に橙色の目。
左の頬には二本の傷も特徴的な長身の青年と、

「どうやら連れて来られたようだな、主。」

こちらは三つの尾をもつ闇色の狼。

「ザクロ!? なんでいるの?」
「フム、引き寄せられた…と言うべきか。」

彼等がそんなやりとりを繰り広げる中で、背後にゆっくりと迫る影。
いつの間にか目が見えるようになった魔物がいきり立って太い腕を振りかぶっていた。

「! アンタら、危な…っ!!」

だがルーツが叫ぶより早く彼等はその攻撃を躱し、体勢を整える。

「…主。」
「うん、俺一人で大丈夫……いくよ、リィン。」

愛しき者を呼ぶように名を告げると、丸腰だった青年の手に大剣が呼び寄せられた。
地を蹴って一気に跳躍すると、その勢いのままに魔物の額に剣を突き立てる。

《グアァッ!?》
「…まだだよ。」

剣を引き抜いて着地すると、トドメとばかりに横薙ぎに両断。

《グギャアアァァァッ!!》

断末魔の咆哮をあげ、大量の血を撒き散らして呆気なく絶命する魔物。

「す、すげぇ…」

僅かな間に起こった出来事を、ルーツは呆然と見ていただけだった。
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