1/2ページ目 〜繋がり〜 「コーラス!」 「ん、リュートか…どうした?」 暇を利用して訪ねてみれば、自分と全く同じ顔に出迎えられた。 少し愛想の足りないこの少女は双子の妹、コーラス。 12年前に行方不明になり、その後別世界で暮らしていた事が判明して無事再会となったのだが… (すっかり馴染んでいるな…) 本来の、クレッシェンド国王女コーラスとしてよりも、こちらで鈴原亜衣として生きてきた年月の方が圧倒的に長いのだ。 当然といえばそうなのだが… 「どうした、入らんのか?」 「あ、ああ。それじゃあ…」 促され、リュートは小さなドアを潜った。 客間に通されると、いつもと部屋の空気が違うように感じられた。 いつも彼女の傍らにいるもう一人の姿が見当たらない。 「来てもらった所悪いが、速水が風邪を引いていてな。奥の部屋で寝ている。」 「マコトが?」 うむ、と彼女は頷いて、 「全く、ナントカは風邪を引かないと聞くが、奴はそれすらも上回るスケールのナントカのようだな。」 「あ、あはは…」 苦笑しながら、出されたコップに口をつける。 言葉には相変わらず毒があるが、心配していない訳ではない。 現に速水の両親が出ている今、彼女は付きっきりで看病をしていたようだ。 「具合、悪いのか?」 「もうだいぶ良くなったが調子に乗るとあの馬鹿者はまたぶり返すからな。休ませた。」 その言葉に、大丈夫だと言い張る速水を強引にベッドへ押し込む彼女の姿が想像され、思わず吹き出した。 「…なんだ?」 「いや…楽しくやっているようだな、コーラス。」 「まぁな。」 穏やかな時間が流れる。 …と、キッチンの方から何やらおいしそうな匂いが漂ってきた。 どこか懐かしい、その香りは… 「シチュー、か?」 「ああ。今出来たばかりだが…味見、してみるか?」 そう言って彼女はてきぱきとシチューを盛り付ける。 「味見、というか…一食分だな。いいのか?」 「たくさん作ってあるからな。」 そういえば彼女はほとんど何でも出来るようだが、料理の方は大丈夫なのだろうか。 そんな失礼な考えが一瞬よぎるが、特に問題はなさそうだ。 「…いただきます。」 おずおずとスプーンを口に運ぶ。 「この味…」 初めて食べる、妹の手料理。 だがリュートにはどことなく覚えのある味だった。 (これは母上がたまに作ってくれる……驚いたな、そっくりだ。) 好みが似ているのか、彼女のシチューは母の…オペラの作るシチューとよく似た味がした。 「こんな所で、繋がっているとはな…」 ぽつりと呟きが洩れる。 別世界での12年の歳月に遠く感じていた距離が、少しだけ縮まった気がした。 「何か、言ったか?」 「…いや。」 なんだか嬉しくなって、リュートは微笑む。 「変な奴だな。」 妹も僅かに表情を緩め、それに応えた。 〜おしまい〜 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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