番外編

【〜ぶらり異世界☆冒険ツアー〜さかにゃんへ・サイト内作品コラボ
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〜速水争奪戦〜

「…というのが今回のリクエストだそうだ。」

唐突にそんな事を言い出すのは『ぶら☆夢』のヒロイン鈴原亜衣。

「…はぁ」

と間の抜けた返事をしたのは主人公の速水誠である。

容姿は可もなく不可もなく、取り立てて目立つ特徴のない少年だ。

「オレの争奪戦?…ってアレか、オレのために争うのはやめてーとかそんなノリなのか?」
「そういう事らしい。」
「…マジで?」

速水は思わず真顔で聞き返した。

「オレを巡って…誰が争うんだよ?」
「そうだな。正直言って貴様を取り合う理由などない。ただひとつを除いて…」

意思の強そうな切れ長の目が真っ直ぐに速水を見つめる。
口を開かなければ誰もが見とれてしまう程の美少女の真剣なまなざしに、見慣れている筈の速水も不覚にも胸を高鳴らせてしまった。

「…ただひとつ?」
「そう、貴様を取り合う理由…それは」

それは?

ゴクリと喉を鳴らし、速水は次に続く言葉を待った。

「ツッコミだ。」

間。

「…は?」
「貴様の唯一にして最大の特徴"ツッコミ"…それは物語の流れを左右する力だ。『ぶら☆夢』は貴様がいてこそ成り立つと言えよう。」

いつもは厳しい幼馴染が珍しく彼を褒めているようだが、どうにも褒められてる気がしない。
むしろそのセリフからツッ込むべきだろうかと速水は渋面をした。

「つーかツッコミってそんなすげぇ力だっけ?」
「ああ。ゆえに貴様はこれから引っ張り凧だ。」

瞬間、速水の足元にぽっかりと穴が開き、彼を飲み込んだ。

「え」

既に落下を始める中、穴の入口から覗き込む幼馴染。

「そういう訳だから…逝ってこい。」
「字ィ違うし行くってどこにぃぃぃっ!?」

底知れぬ奈落に消えるまで、速水は叫び続けた。

「フ、流石だな速水。」

鈴原は深い暗闇をいつまでも見つめながら、満足そうに呟いた。
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