番外編

【〜おいでませギルド見学ツアー☆〜音印さんへ・コラボ
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〜おいでませギルド見学ツアー☆〜


ある晴れた日の朝…というか、昼前。

「ファング、ファングっ!」

ぱたぱたと騒がしい足音を立ててやって来たのは天才などと称される魔法技師、クレイン。
しかしそれにも構わず、彼の相棒…ファングは起きる気配がない。

「もぅ、ホント朝は弱いんだから…起きてよファングっ」
「んー…?」

両肩を掴んでゆさゆさと揺さぶられて、ようやくアイスブルーの瞳がぼんやりと覚醒した。

「あぁ、クレインか…おはよう。」
「おはようっていう時間もギリギリだけどね…」

日頃だらしない態度を注意されるのはクレインの方なのだが、朝と暑い日だけは立場逆転。しっかり者のファングの弱点だ。

「今日もやっとるのか、馬鹿者どもめ…小僧が来てるぞ。」
「小僧って言うなぁ!」

紅髪に褐色の肌は同居人の男、ガナシュ。
次いでひょっこり顔を出した金髪金目の『小僧』はルーツ。

「ガナ、…ルーツ?」
「まだ寝ぼけてるし…今日は『ギルド』に行く日だって言ったでしょ?…そしたらこの子犬君が、」
「ネインんトコ行くならオレも!…って。」

彼等の言葉を鈍い頭で反芻し、ようやく思い出したらしいファングは柏手を打った。

「…ああ、そうだったな。」
「大丈夫か、このオッサン?」
「あと5分くらいしたらいつもの調子に戻るから…」

少なからず彼に憧れを抱くルーツは、普段と違い過ぎる姿に複雑な気持ちになるのだった。


――『ギルド』

平たく言えば人材派遣の何でも屋…というのがとある天才魔法技師のかなりはしょった説明。

「でもネイン達のいる所って遠いんだろ?」
「ふっふっふ、天才に不可能はないよ♪…こないだの逆をやればいいんだよね。」

こないだ、というのは以前に『ギルド』から人材を呼び寄せて危機を脱した時の話。
クレイン曰く、転移魔術の応用だというが…

彼は自ら作り出した魔法アイテム『シエン君』を取り出すと、自身の瞳と同じ色をしたシエン君の大きな目玉部分に向かって話し掛ける。

「あー、もしもしレディア? うん僕だよ〜、あのね…」
「結構便利なんだな、その目玉のオバケみたいなの…」
「シエン君、だ。目玉って言うとまたギャーギャー言われるぞ。」

ルーツとファングがこそこそ話していると、遠く離れたギルドのオーナーと話し終えたクレインがシエン君を持って近付いてきた。

「はい、話終わり! んじゃ行くよ〜」
「貴様らだけで行って来い、留守は守ってやるから。」

ガナシュはくるりと背を向け、三人から離れる。

「人間が大勢いるのだろう?…俺は行かん。」
「ガナ…」
「…騒がしいのが苦手なだけだ、気にするな。」

ファングとガナシュ、二人はかつて人間から手酷い扱いを受け虐げられた『魔獣』という種族で、特にガナシュの人間嫌いは当初かなりのものだった。

ファングと再会し、そして二人の正体を知っても変わらず接してくれる人間達との出会いでガナシュは少しずつ変わってきた。

…と、彼は振り返るとルーツに向かって、

「…小僧」
「小僧じゃない、ルーツだ!」

騒ぐ子犬の頭に大きな手を置き、わしゃわしゃと撫でる。

「お前には勉強になる筈だ。行ってこい。」
「ガナシュ…」

それだけ言うと再度背を向け、すたすたと行ってしまう。

「ガナ、あいつ…」
「ぶっきらぼうだねぇ、お父さんは…んじゃ、行こっか☆」
「…ああ。」

そうしてクレインは意識を集中させ、魔術を発動した。
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