▼短編
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―苛々にはニボシという愛を―


ジリジリとアスファルトを太陽が容赦なく照らす8月。
だらしなくシャツを手で仰ぎながらダラダラと歩いていく男子生徒が居た。
暑いのか時折持っている手拭いで額を拭きそしてまただるそうに歩く。
そんな彼の後ろから暑いのを知ってかしらずか、若しくはわざとなのか背中に抱きつく男子生徒がまた一人。
端から見れば大の男が2人して抱き合っていてむさ苦しいとしか見えないのだろうが、当の抱きついた本人は至って本気な行為であった。
色素の薄い髪の毛は金髪に近く、身長も決して高いとは言えない。目はくりりとしておりふんわりと甘い香りを漂わせている。

抱きつかれた男子生徒はというと死語に近い言い方だと「イケメン」である。
身長もそこそこあり、漆黒の髪の毛は白い肌によく際立っている。難点を言えば口の悪さと目つきであろう。

「……おい総悟。いい加減この季節でも抱きついてくるのはやめてくれ」
「何でィ、減るもんじゃあるまいし。」
「減らなくてもこっちは毎日毎日暑苦しいんだよ!いい加減気づいてくれ」
「いやいや、土方さんも結構こんな事期待してるんじゃないですかィ?」
「…すみませんー、誰かこの勘違いな子今すぐお家に返して下さい。」
そんな軽い冗談を溢しながら2人は何だかんだと言いつつも毎日学校まで通っていた。
ああ、なんて暑苦しい毎日なんでしょう。





今年に入ってから、女子の黄色い歓声が大きくなったと思う。
理由はなんとなく分かるが、それにしても煩い…。
これが他の奴らなら良いのだが、その歓声の原因があいつだから余計に苛々するのだろう。

「きゃー!!!!沖田先輩ーッ!!」
「先輩!一緒に写真とって下さいっ!!!」

「……なーにが沖田先輩だ」

別に嫉妬とかではない。自分もそこそこモテている自覚はあるし、呼び出されたりもする。あいつだって女ウケが良い顔してると思う。
俺が苛々しているのはそこではない。
今朝の今朝まで俺にべったりだった奴が今じゃ女子どもに鼻の下伸ばしては仲良さげに話している姿が苛々を倍増させていた。
それだからどうとかではないが、昔のあいつはいくら女子に絡まられていてもすぐに俺の元に来てくれていたんだ。
それが今ではなんだ。

苛々苛々…
なんで俺がこんなもやもやした気持ちにならなければならないんだ。
何もかもあいつの気まぐれのせいなのに。

「…くそっ」

それから半日、俺の苛々は放課後まで続いた。





「ひーじかーたさん、何を不貞腐れてるんですかィ?」
放課後、毎日通う剣道所うに俺らは居た。今日は自主練のため人も少ない。
剣道部は近藤さんを先頭に全国レベルの強さを誇っている。悔しいが、総悟も期待の新人の一人だ。
そして自主練なんてものこいつはしたことがない。いつもいつも俺の邪魔をするか寝に来ているだけだ。
「…なんだよ」
「今日はまだ練習始めないんですかィ?珍しい。いつもなら気持ち悪いほど練習してるじゃねーか」
「…うっせーよ」
「ふーん…」

苛々
苛々。

ああ、俺はこんなにも器の小さい男だったのか?
総悟に声を掛けられるたび胸のもやもやが無くならなねー。
なんだこのイラつきは。どうなってんだよ。

「…土方さん、変ですよ?」
「何処がだよ。」

自分でもわかっている。
本当に今の自分は変である。何をこんな気持ちなのか。

「あ、ここ解れてる」
「…ッ、触るな!」
「………」
確かに袴は解れていた。今朝気付いた所だ。
それをあいつが触れようとした瞬間甘ったるい女用の香水の匂いがした。

…そんな匂いで俺に触れるな

そんな言葉が脳裏に浮かんだと同時に俺は総悟の手を振り叩いていた。
最悪だ、手が勝手に動いていたってのはこの事なんだろう。

「…悪い」
「さっきから可笑しいと思ったら、なんでィ。嫉妬かィ」
そういったと思いきや胸倉を掴み再度問いかけてきた。「嫉妬でしょう」と。

嫉妬?誰が、俺がか?
なんで総悟に対して俺がそんな気持ちを抱かなければならないんだ。
相手は総悟でしかも男だぞ?
まさか、な

「なら、試してみますかィ?」
「は!?…ッ!」

俺の唇はあいつの唇に一瞬のうちに塞がれていた。
引き離そうと力を込めるも相手の方が俺の上に乗っている為か若干力がかからない。
当の本人はどこうとも思ってないらしい。

「…ッ、総悟!やめろ!」
「土方さんは何も分かってねー」
「は?何をだよ!」
「あー…それ素で言ってるんですかィ?それ洒落にならねェですよ」
「洒落も何もお前が俺の何を分かってんだよ!良いからどけ!」
「嫌です。」
そう言うとこいつは益々身体を密着させては離れようとしない。

まてまてまて!
どういうことだよ!!なんでこいつが俺を襲ってるような図になってんだよ!

「俺はアンタに何度も何度も触れようとしてきたんだ。なのにアンタは顔色一つ変えず返してきやがる。」
「当たり前だろ!俺とお前は先輩と後輩の仲でましてや男同士だろ!」
「わかっちゃいねェ。土方さん、俺は一度だってアンタを先輩とは見たことなんてなかった。


好きなんですよ。俺はアンタの事が。」


ひゅっと風が俺たちの間に入ってきた。
今こいつが言ったことは本当なのだろうか。
いつもの冗談なのでは無いか。けど、俺だってそこまで鈍感ではない。

本気で、こいつは…



「なんて、どうせアンタはそこらへんの女が好きなんでしょう。いっつも俺の周りに居る女子見ては鼻の下伸ばしてはニヤケ面で、あー、気持ち悪い。」
ペッペッと唾を床にかけるこいつは本当に餓鬼だと思った。
けれど、そんな事を考えた俺も餓鬼だ。

今日の俺は可笑しい。
暑さにやられたんだろう。

いかにも気にしてない素振りをしているこいつが今にも泣きそうに見えたんだ。
そう思った瞬間、俺は自然と自分の胸に引き寄せていた。


「…何すんですかィ」
「俺にもわからねーよ…」
「あ、もしかして土方さんムッツリですか?あー、これだから童貞はいやですぜィ」
「じゃあ、お前はなんで泣いてんだよ」
「泣いてなんか…」
「うるせーよ。黙ってろ」

泣いて無いとかいうこいつの目からは涙が溢れ出ていて、目は真っ赤で。
なんて顔してんだよ。なんで泣くんだよ。
もしかして俺が女を見てたとか思ってたからか?
そんな訳あるか。むしろ俺は…


「おい、一度司言わねえからよく聞けよ」


まだこの気持ちがなんなのかはわからねー。
けど、これだけは俺でもわかってるつもりだ。
なあ、泣くなよ。らしくねーだろ。
まだお前が望むような言葉は言えない。
だけどこれだけはわかってて欲しい。


「お前がこうやって泣くのは俺が居る時にだけにしろ」

それが俺のせいだとしても、俺が居る事で余計に悲しくなっても


「…鈍感な上に勝手だ」
「うるせーよ」

でもどこか嬉しそうなこいつの顔に、今迄の苛々が消えたのは此処だけの話。





***
久しぶりすぎて何を書いているのかわからなくなったというオチ。
沖田片思いを書きたかったんです。それだけなんです。
もうちょっとわちゃわちゃさせたかったんですけどリハビリ的な更新なんで。
多分次からはもう少し中身のある話が書けると思います、多分。

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